知ってるようで知らないコンクリートの中

コア抜きしたコンクリートの塊

ほとんどの方が一番に思いつく建物材料と言えばやはり「木、鉄、コンクリート」の三つでしょうか。

ですが、これから住まいづくりを考えている人でも、建物の材料を詳しく知る人はなかなかいません。日頃から建築設計をしている私たちでさえ、実のところ詳しく分かっているのかと言えば、なかなかそうと言えそうにありません。学校で習った初歩の知識も遠のき、木の種類、鉄の種類、コンクリートの種類をどれだけ並べられるかと問われると、はなはだ自信のない有様になりそうです。

そんな事を考えている折、コンクリートのコア抜きをすることになりました。コア抜きとは「出来上がったはずのコンクリートに穴を開ける工事」なので、本来必要の無いはずの工事です。なので実は褒められた事で決してありません。組み上がって本来オモテに現れない鉄筋もあらわに切断しかねないので、細心の注意も必要です。
ちょっと悔しい気持ちもあって、抜いたコンクリート片の一つを持ち帰ってきました。それをしばらくせっせと耐水紙ヤスリで磨いてみたのが写真にある円筒の塊です。

普段見る出来上がったコンクリートとちょっと違います。コンクリートと言えば、こんなに石の断面は見えず、もっとのっぺりと無表情で細かな模様はなく単に薄グレーな印象でないでしょうか。注意深い方なら、古いコンクリートの土間の印象を重ねられるかもしれません。そう、コンクリートの中って、結構石が詰まってるのです。

「コンクリート=セメント」と考えられがちですが、実は「たくさんの石を砂とセメントで繋ぎ固めたもの」がコンクリートです。合わせて書けば「砂だけをセメントで繋ぎ固めたもの」がモルタルと呼ばれるものになります。コンクリートの中の石の比率は概ね6割以上になるので、こうして磨いてみると石の詰まった様子がよく分かります。小さなツブツブは砂ツブです。
これこそが本来のコンクリートの姿?で、普段からコンクリートと思って見ているのはほとんどセメント部分な訳です。解っているようで、分かっていない事だと思いませんか?

ちなみに、こうして磨いた仕上げをテラゾーと呼び、左官仕上げの一つにもなります。
見る事がすっかり少なくなりましたが、昔の小学校の水飲み場や百貨店の階段手すりはテラゾー仕上げのイメージがあります。この場合は、モルタルに綺麗な石を混ぜ込んで磨いたものです。手間を掛ければ2つとありえない表情が現れるのですから、どことなくワクワクしてきます。ですが、テラゾー仕上げをしたくとも手間が掛かる仕事なので今は職人さんがほぼいないのも実情です。
写真の円筒コンクリートももっと磨けば、まるで百貨店の柱の様に?ツルツルになります。

「木目」は誰でも気にかけますが、「コンクリート目」に注目するのはちょっとマニアックで面白いかもしれません。「うちの玄関先のコンクリート目は端正で、どこの家にも負けず素晴らしいんだ!」なんて、いかがでしょう。

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