仕上げの材料と設備

建築の仕上げ材料は、屋根・外壁から内装・設備に至まで星の数ほど無数にあります。建築士はひとつひとつカタログをめくり、建物に合うものを検討するだけで膨大な時間を費やしています。
ここでは、これまでの蓄積からこのように考えてほしい、これならお薦めできるという物を紹介し、できれば使って頂きたいと考えています。
中には、価格競争に鍛えられたメーカーの標準商品より費用がかさむものもあります。もちろん全てを使ってくださいと言う事ではありません。
大事にしたいところ、気にかかるところ、ポイントとして使って頂くので良いのです。
ひとつひとつ思いめぐらせ住まいづくりに参画することが、愛着を産み、豊かな暮らしに繋がると信じています。

基本の方針

自然素材を中心に、
風が通り空気がきれいな健康に配慮した住まい。

たとえば、壁面に無垢の板張りや漆喰など調湿機能・ホルムアルデヒド吸着機能のある材料を用いるだけで、室内環境は随分良くなります。もし予算に応じてクロス張りであったとしても、厳選したメーカー素材を選定します。
また、自然素材を使えば全てが良いとは限りません。適材適所に使い、素材の長所短所を見極める事こそが本来のあり方と考えています。

家族と暮らす住まいは、流行やナニナニ風など形に捕われずいつまでも慈しむことのできる住まいでありたいものです。そのような住まいを設計メンバーで熟考を重さね意匠に反映します。

時間が経過しても飽きず、すたれない佇まいの住まい。

具体的な諸例

内容が多岐に渡りますので、お時間のある時で構いません。
興味を持たれたところからじっくりとお読みください。

▽:外部・・・屋根や外壁のこと。
▽:内部・・・フローリングや壁の材料のことなど。
▽:設備・・・キッチンやお風呂、冷暖房のことなど。


外部

屋根

外部仕上-屋根

屋根は、おおまかに斜めの勾配屋根と水平の陸屋根に分かれます。さらに一般的な勾配屋根には瓦葺き・金属葺き・スレート葺き・などがあり、それぞれに意匠の違いに伴う値段の違いがあり、どれが高い安いと言うものではありません。比較的バランスの取れたものを考えると、ガルバリウム鋼板を使った金属屋根になります。構造的にも負担が少なく耐久性も高いことから、お薦めすることの多い材料のひとつです。*

外壁

外部仕上-外壁

外壁には、ハウスメーカーや地元工務店さんに多用されるのが窯業系サイディング/金属系サイディングと呼ばれる製品パネル工法のもの、モルタル壁に吹付け塗装や漆喰等の左官工事を施す塗り壁工法のもの、またその併用的な工法、その他金属板を用いた板金加工による工法などがあります。外観に関わるところなので、施主さんも設計者も一番悩むところです。また建築工事の中でも占める面積が大きくコストに係るところなので、悩ましいところにもなります。*
(参考) サイディングについて

防水(屋上・バルコニー)

外部仕上-防水

屋上は、全てではありませんがほとんどが陸屋根となり重要なポイントが防水工事です。バルコニーもまたアルミ製品等を使わない建築工事によるものであれば、必須になるのが防水工事です。防水工法には、アスファルトによるもの、シートによるもの、FRPによるものなどがあります。
以前に比べると雨漏りなどの心配は少なくなりましたが、見落としがちなのが屋根裏の結露です。特に下階が部屋になる場合は、通気や気密を押えた結露対策をキチンと施すことが重要なポイントになります。*

窓・サッシ

外部仕上-窓

窓には、アルミサッシ、木製サッシ、少なくなりましたがスチールサッシなどがあります。
窓の形やサイズは無数にありますが、それらの組み合わせや使用の目的、または近隣との兼ね合い、景色の取り込みなど、機能だけでなく空間の豊かさを大きく左右し、その配置ひとつで暮らしやすさも大きく変わります。設計士の多くが外壁以上にこだわる腕の見せ所になります。*

ガラス

外部仕上-ガラス

住宅で主流に使われるペアガラスは、二重ガラスの間を真空にしたりガスを注入して断熱性を高めたものになります。現在はさらに、水銀膜を定着させたLow-E ガラスは遮熱性が高まり夏の熱射を軽減します。それらのガラスは、省エネルギー対策にほぼ標準的な装備となります。

玄関ドア

外部仕上-玄関

言い換えれば家の顔とも言える部分。以前に比べればアルミ既製品にも意匠性の高い商品も増えましたが、他にはないオンリーワンの木製ドアも捨てがたいのが設計士の心情です。木製の玄関ドアを使ってみたいと言って頂けると、設計士のテンションは上がるかもしれません。ただし、地域によっては防火等の規制もあります。

ポーチ 〜 玄関土間

外部仕上-土間

玄関には土間がつきものです。玄関ドアにも勝って、家の雰囲気づくりに貢献します。料亭に行けば水打ちされた石の土間に恐る恐る足を踏み入れませんか? 材料には石のほか、タイルや左官などありますが、アプローチやポーチと共にコーディネートに気をつけるのがポイントです。

諸例の目次に戻る


内部

内部仕上-床

洋式の床の代表はフローリングですが、その他にカーペットやビニールシートやタイルがあります。和式の代表はたたみですが、藤や竹の編み物など風合いのあるものもたくさんあります。
床の素材、肌触り、色合いや柄で部屋の雰囲気は随分と変わります。内装のイメージだけでなく生活スタイルを決める最も重要な部分と言えるかもしれません。また、建物の部位でもっとも素肌にも触れることの多い部分なので、材料選びは慎重にしたいところです。

フローリング

内部仕上-フローリング

フローリングとひと言で言ってもその中には、無垢フローリング、積層フローリング、複合フローリングなどがあり、今はシートフローリングと言われるものもあります。
主なものとして、次のようなタイプが挙げられます。
無垢フローリング・・・基本的には一枚ものですが、UNI(ユニ)タイプと言われる組み合わせもあり。
積層フローリング・・・3〜4ミリ厚以上のスライス板を張り合わせたタイプ。
複合フローリング・・・下地ベニヤの上に、表面だけ仕上げのスライス板を貼り製品化されたタイプ。
シートフローリング・・表面の仕上げ材もオレフィン等によるシートのタイプ。

たたみ

内部仕上-タタミ

たたみも今は天然のものから、和紙を材料に使った工業製品もあります。特に子供さんの小さい時は、そうした製品タイプのものが汚れにくく色合いも従来に無いものが揃って良いかもしれません。琉球たたみも人気のアイテムです。
(参考) 畳の種類やサイズについて

壁・天井

内部仕上-壁・天井

室内で一番面積を占める部分になります。床と共にインテリアのベースになりますから、できるだけ健康にも気を使った材料を選択したい部分にもなります。後述していきますがクロスや板材や左官材など、多種多用にあるなかでそうしたところへも気を配ってチョイスしてください。

クロス

内部仕上-クロス

一般的なビニールクロスの中でもいろいろな材料や機能を持ったものがあります。以外にも、紙クロス、布クロスなど、分類するとキリが無い程に種類があります。また、左官工事のような仕上げになる珪藻土クロスなどは、落ち着いた雰囲気もあり和室に限らず好まれることも多いクロスです。選べる種類も多く一般的にコスト面でも押えやすいため、壁材の主流となっています。
ただそうした一面、時間の経過のなかでクロスの継ぎ目が浮き出たり、風合いよりも汚れのように感じてしまうのは否めません。

ペンキ(内装用)

内部仕上-ペンキ

ペンキ仕上げは、どことなく安っぽいイメージを持たれることが多いのですが、奇麗に仕上げる為には工程も人手も掛かり、一般的にクロスよりも高価な内装になります。ツルっとしたもいかにもペンキの仕上りから、左官工事にも似た仕上げの工法まで、クロスとはまた違った風合いを持って多種多用なバリエーションがあります。
(参考) ペンキについて

塗り壁(左官)

内部仕上-左官

塗り壁と言うと漆喰や聚落(じゅらく)砂壁など和室に多く見られますが、左官材料の中には洋風な色合いのものもあり、洋室の左官仕上げはまた味わいのある空間に仕上がります。クロスやペンキに比べると人の手が加わった味があり、仕上りにもぬくもり感がでます。調湿効果なども、クロスやペンキの疑似製品に比べると実際に塗られる材料の厚みがある分、効果も高いと考えられます。*

羽目板(壁・天井)

内部仕上-羽目板

板張りの壁や天井は使う材料にも寄りますが、これまでの内装材料に比べるとずっと存在感があるものになります。腰壁や一部分に使ってアクセント的に扱ったりピンナップボードの変わりに使うも良い方法です。

造作(窓枠・ドア枠・造付棚・巾木など)・階段

内部仕上-造作

内部造作の材料を一番大きく別けるとすれば、既製品と木材と言えるかもしれません。最近は、あらゆる造作材が既製品化されシステマチックになっています。言い換えるとインテリアにおいて設計士はコーディネーターになり、大工さんは腕のふるい場所が無くなってきています。もちろん場所によって使い分け、コストを押えることも考えられます。
私たちは手仕事で作られた大工仕事を、愛着を持って使われる様子をこれまでも見てきています。ひとつでもそうした作りを頼まれることを望んでいます。*

内蔵建具(木製建具)

内部仕上-建具

造作と同様に、今は既製品も多種多様になってきました。本物と区別が付かないほどに出来たものもあります。先の造作材にも絡みますが、既製品の多くはシート貼りの枠材がセットになります。また、サイズに制限があるなどプラン(間取り)上の制約を受けることもあります。
また天然材料を使った既製品も見られますが、多くは高価になりがちです。手仕事の建具もデメリットはありますが、統一したイメージやデザインを考えた場合にはコントロールがしやすくなります。
(参考)建具について

諸例目次に戻る


設備

キッチン

設備周り-キッチン

キッチンは、実質的には家の中心と言い換えても良いかもしれません。
またキッチンは既製品を見ても、上から下まで一番ランク差の大きな設備になります。特別なこだわりが無ければ、「くらすま」ではベーシックなものを基本と考えます。
また、専門業者でのオーダーキッチンも可能ですし、一から我々設計者がデザインするオンリーワンキッチンを作ることも可能です。*

浴室

設備周り-浴室

浴室は大きく別けると3つ。ユニットバス。ハーフユニットバス。在来工法による浴室。
ユニットバスは完全既製品になります。在来工法は防水工事から始まり完全フルオーダーになり、浴槽と防水部分だけ既製品を使う方法をハーフユニットと呼びます。
特別な要望や、プラン上の制約が無い限りはユニットバスを選ぶのが標準ですが、こだわりの浴室空間を作る為にハーフユニットや在来工法を選ぶことも可能です。ただし、木造の2階など防水上の心配が大きい場所については、出来る限りはユニットバスもしくはハーフユニットをお薦めします。*

衛生設備(洗面台・トイレなど)

設備周り-衛生機器

浴室のユニットバスや、便器は、ご希望が無い限り工務店さんや設備屋さんが仕入れし易いベーシックなものを標準的に考え始めます。洗面台についても同様ですが、プラン上やデザイン上またはコスト上許されるなら家具工事や大工工事によるオリジナル洗面台にすると、他には無い豊かな印象を与えることも可能です。

冷暖房設備(エアコン・床暖房など)

設備周り-冷暖房

冷暖房設備は何が良いかと聞かれる事は多いのですが、昨今はエアコンも多機能になり、また様々な方式の冷暖房設備が市場にあり、ひとつひとつを正確に把握するのは実際困難な状況です。ですので、まずはご希望の設備を伺い、必要によればメーカー等の効率・コスト試算なども行います。
冷暖房設備は建築や断熱の仕様や実際の使い勝手も考慮しながら、また設計者の経験も加味しながら考えする進めなければ、高価な設備を入れてもその効果を発揮しないこともあり得ます。*

給湯設備(電気給湯・ガス給湯など)

設備周り-給湯

給湯設備は大別するとガスと電気に分かれますが、昨今の震災の影響も含め、どの設備が良いと一概に言いづらい状況です。後述の太陽光発電なども含め、将来的なイメージを考慮して選択するしかありません。ただ設計者として考慮できることは、メンテナンスとやり替えの効く施工方法でまかなうことかもしれません。

発電設備(太陽光発電・蓄電設備など)

設備周り-発電

太陽光発電に関しては、計画を希望される場合、初期段階から希望をお聞かせください。パネルを効率的に設置できる屋根形状を考えることもありますが、後での希望は、場合によれば防水工事に悪影響を及ぼします。防水上の心配がつきものの太陽光パネルですが、一つでもその要因となる状況を取り除きながらの設計が考えられます。
その他蓄電設備など、新しい技術が開発され建築に取り込まれると思われますが、いち早くそうした情報を正確にお伝えできる様努力しています。まずはお尋ねください。

諸例目次に戻る


「 くらすまについて 」に戻る